みなさん、今、安曇野の里山のアカマツが
どんどん枯れていってるのをご存知でしょうか?
初夏から秋にかけての緑の季節、
里山に赤く立ち枯れた木々が目立つようになってきました。
山麓線などの道路を走ると、切られた木が集められて、
そこにシートがかけられているのを見かけるでしょう?
あれはアカマツを燻蒸(くんじょう)処理しているのです。
※燻蒸処理
害虫駆除や防カビ・殺菌の目的で、気体の薬剤を対象に浸透させる方法。
立ち枯れの原因は松食い虫です。
と言っても、松くい虫という虫がいるわけではありません。
マツノザイセンチュウという1mmにも満たない線虫がアカマツに侵入し、
水を吸い上げる道管を痛めるため、枯れていってしまうのです。
このマツノザイセンチュウ自体は小さな線虫のため移動できませんが、
それをマツノマダラカミキリという松を飛び回るカミキリ虫が運ぶため、
木から木へと被害が広がっているのです。
数字をあげると、
被害量 平成14年が261、平成24年が4,784 単位は立法メートル。
なんと
この10年で18倍になっています。被害量の単位が立方メートルで言われると、素人では分りにくいですよね。
だいたい直径30cmの太さで高さが20mの木が1立方メートルだそうです。
それぐらいの大きさの木が、
平成22年からは毎年4500本以上枯れているのです。松枯れで荒れた里山は景観上貧相に見えます。
そして見た目だけでなく、ダムの役割を果たす山の保水機能を失くし、
大雨などがあった場合、地崩れなどの被害が起きる可能性も高まり、
市民の暮らしを脅かします。
被害のエリアは明科で被害全体の70%弱を占めています。
確かに明科エリアにいくと立ち枯れの目立つ里山が多いです。
僕も体験に行った野外保育くじら雲のある押野山は、
アカマツを皆伐(全て切る)ため、山の上の園舎に登れなくなりました。
そして今、明科地域だけでなく、それは山火事が広がるように、
穂高や豊科、堀金、三郷の地域にも広がり始めています。
松本や松川・池田・大町にも広がっていくでしょう。
アカマツが多い信州の里山がこのままでは壊滅状態になる、
その一歩手前の待ったなしの状況にあるのです。それに対して安曇野市はどのような対策をしてきたかというと、
・樹幹注入 これは予防のため。薬剤を木に注入します。
・薬剤防除 これは車上から木に対して吹き付けるやり方と
ヘリコプターで散布するやり方があります。
・伐倒燻蒸 切り倒して燻蒸処理。
・伐倒破砕 切り倒してチップにする。
・更新伐 切り倒して新たに広葉樹などを植える
・焼却 燃やして処分。
があります。
どれも手間がかかったり、費用が掛かったり、簡単ではありません。
そんな中で、この秋2つの新たな対策が始まりました。

1つは
薪ボイラーです。
松枯れの被害木を薪にしてボイラーを沸かし、
その熱で温泉施設の湯の加温に使うというもの。これは長峰山の天平の森に設置されました。
また改修される穂高のしゃくなげ荘にも導入されます。
効果が上がれば、各所への導入が進むでしょう。
松枯れの木を燃料にしてボイラーを沸かすというのは全国初の試みだそうです。
もう1つ。これは民間企業の取組です。
林友ハウスというハウスメーカーが、
カラマツやアカマツを製材→乾燥→加工の一貫ラインをこの程作り、
枯れたアカマツをフローリング材として使えるように製品化を試みているのです。天平の森の薪ボイラーも、林友さんの加工ラインも見学させてもらいました。
処理しなければならない被害木が資源として、
燃料や建築用材として活かされていくのです。

そして今日は
「松枯対策と里山再生を考える研究会(仮)」
なる集まりに参加してきました。
森林組合や民間の林業社、松枯れで荒れる里山を何とかしたいと思っている地域の方たち、
市民活動のメンバー、そして市議らが集まって、
松枯れの被害状況やそれに対しての対応を話し合いました。
これだけの被害状況では、行政の農林部だけで解決できる問題ではありません。
また行政だけに任せておけばいいとうことでもありません。
様々なセクションや関係者、そして市民が連携して、
この問題に向き合わなければなりません。現在、行政内には部署を超えた横断的プロジェクトチームはありません。
今日の研究会には、今後そのようなプロジェクトの中核を担うような、
この問題を何とかしたいという思いのある方たちが集まっていました。
レポートしてくれたある方が、
「諦めちゃいけない。やれることはなんでもやっていく。
せめてやれるだけのことはやったということだけは残したい。」
と言っていたのが印象的でした。
松枯れ被害は安曇野市の喫緊の大問題で、現状は大きなマイナスです。
しかし、針葉樹だけの山から、
針葉樹も広葉樹も混合した多様な森を創り出していく大きなチャンスです。また問題だからこそ、
その解決のために安曇野市民が力を合わせる必要があり、
安曇野はひとつ、という一体感も醸成されていくでしょう。
おらほ(俺たちの)の山を自分たちの手で再生していくことで、
安曇野の自然を大切に思う気持ちも育まれるでしょう。
私たちが頑張れば、安曇野のことを大好きな全国の人たちも、
きっと私たちを応援してくれるでしょう。
対策資金のカンパもあるかもしれないし、
里山再生の作業を一緒にやろうよ、と呼びかければ、
山仕事をやりに来てくれる人たちも少なからずいるでしょう。
安曇野内外の人たちが知恵と力と心を一つにして、
里山再生を取組み、安曇野の自然や景観を守っていくのです。
難局ではありますが、そんな夢や希望を描いて行動していきたいです。まずは来年、被害木のアカマツを使っての
アカゲラの巣箱づくりのワークショップをやろうと思います。
アカマツにかけられた巣箱にアカゲラが寄ってくると
カミキリムシを食べてくれるそうです。
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