環境経済委員会の熊本・長崎の視察レポート
- 2015/08/12
- 23:10
7月末に行った私が所属する議会の環境経済委員会の視察研修の報告です。
日時:7月29日(水)~31日(金)
研修地と内容:
29日 熊本市役所/地下水保全、涵養、汚染対策(熊本)
30日 水前寺成趣園、健軍水源地/遊水地、水源地の見学
城南物産館火の君マルシェ/指定管理の新規直売所
以上、熊本
長崎市役所/長崎さるく(国内初のまち歩きイベント)、空き家対策(長崎)
31日 原爆資料館、長崎さるく体験・原爆被災研修(長崎)
以上、長崎
上記研修の中から、特に印象に残った以下の2点を報告します。
1、熊本市役所、水前寺成趣園、健軍水源地
テーマ:地下水の保全・涵養・水質汚染対策、及び水源地の視察

●地下水の保全・涵養
人口50万以上の市では国内唯一、上水の水源が地下水を利用している熊本市。
阿蘇山系を背景にして日本一の水を保持している自負を行政の方々から感じた。
全て地下水を利用しているという点では、我が安曇野も同じだが、様々な先進的な取り組みをされている。
印象に残った取り組みとして、
・節水対策
キャンペーンにして商品を出すなど市民が楽しんで意欲を持って取り組める。
・涵養対策
市外地域だが阿蘇方面の町村に市が土地を借りて植林をする。
静岡地域で漁師が山の手入れをしたというニュースを聞いたことがあるが、
水を利用する下流の人々が上流の森づくりをするというのはなかなか簡単にはできないことだと思う。
熊本市が行政区を超えて取り組まれていることに驚いた。
・ビニールハウス補助金制度
ビニールハウスの雨水までも集めて地下浸透をさせる。
地下水を守るという意識が徹底されていると感じた。
安曇野市の場合、雨水利用のための施設設置の補助制度があるが、
各戸の経済的メリットからの利用であり、
地下水を保全するために節水するという意識はまだ薄いように思われる。
市民、行政が地下水の大切さ、かけがえのない財産であることの意識を熊本に学び、
安曇野市で展開していく必要がある。
尚、節水キャンペーンなどにより、上水道事業の収益は下がるが、
これは何が大切かという優先順位を明確にし、
下がった分については水道事業会計に一般財源を拠出すればよい。
●水質汚染対策
熊本も農業県であるため、肥料による亜硝酸窒素による水質汚染が顕著で、
その危機感からも地下水保全の意識が高まったのではないか。
安曇野市でも一部汚染されているところがあるが、基準値内ということで、まださほど問題になっていない。
しかし熊本の場合がそうであったように、一度基準を超えてしまうような汚染があると、
30年も取りくんでも基準値に戻らない状況がある。
このあたりでしっかりと慣行農業(施肥や農薬散布など)について見直す時である。
熊本県が施行した「熊本県地下水と土を育む農業推進条例」は
地下水と農業の関係がかけ離れたものではなく、一つであるという考えからできたものである。
今後農業・農政サイドがこの条例をどのように実質的に機能させていくか注目したい。
●まとめ
私は一般質問で、「安曇野の水環境を守ろう」と言うテーマを取り上げ、
安曇野の水を脅かすものとして、三郷小倉の廃棄物処理施設の排水処理の不備を訴えている。
これを単なる目前の施設の一地域の問題ということではなく、旧5町村に亘る安曇野市全体の問題、
さらに安曇野を愛してやまない国内外の人たちにも関係する問題、
また我々が受け継がれたように、我々もまた次世代に受け継いでいくべき不可変の資源・宝という観点から、
広い視野を持って、安曇野の水を安曇野内外の方たちと守っていきたい。
安曇野市でもこれまで以上に、地下水の質と量を注視監視し、今からできる対応を行政・議会で議論し、
市民にも地下水保全が市の最重要課題であることを訴えていかなければならない。
具体的には節水キャンペーンは安曇野市でも取り組んでみてはどうだろうか。
2、長崎市役所と長崎さるく
テーマ:長崎さるくの取組と平和研修

●長崎さるくと滞在型観光について
今でこそ街歩きは滞在型観光として位置付けられているが、
長崎さるくは日本で初めてのまち歩き博覧会として2006年にスタートした。
自分たちの暮らす地域の歴史や文化、生活そのものを学び体験させるツーリズムであるが、
観光都市長崎において、従来の基本となる観光資源にプラスされ、すっかり定着している。
安曇野市でも2013年に安曇野市観光振興ビジョンが策定され、
「安曇野暮らしツーリズム」というキーワードのもと、安曇野らしい観光を展開させていくためには、
市民の協力を得ながら、大切にしてきた自然や農村景観、歴史・文化、コミュニティを
来訪者に伝えていくことが必要だと考えた。
長崎市も安曇野市もベースとなる考えは共通しているが、
その実行においては長崎市が「長崎さるく」を通じて何歩も先をいく。
安曇野市においても、安曇野案内人倶楽部という民間グループがまち歩きのガイドを行っており、
新たなガイドを養成する講座を開くなど、著しい活動を展開し、
市の観光理念である安曇野暮らしツーリズムを体験する機会を提供できている。
しかし、安曇野市全体を通じては、この観光理念の認知度がまだまだ低く、
引き続き周知に努めなければならないと思う。
これからの観光は、その地域に暮らしている人々の喜びや幸福を、
旅行者もまたいかに感じられるか、その仕掛けづくりが肝要である。
アルプス国営公園からの働きかけによって今年度から始まった
農家民泊もそのような仕掛けの一つであると言える。
このように民間の方たちの暮らしや活動に市外の人たちも参加し、喜びを共有すれば、
単なる旅行者ではなく、安曇野のファン、安曇野を第2の故郷と感じ、
何度も足を運ぶような人たちが生まれてくるのだと思う。
この点については、自分も最も関心ある課題であるので、引き続き働きかけていきたい。
●平和研修について
最終日に長崎さるくの体験として、平和をテーマにガイドさんに案内してもらった。
被爆地である長崎には、市民の公共の福祉の充実だけでなく、
世界に対して平和や核兵器の廃絶を訴えるもう一つの重要な役割がある。
市長や議会の果たすべき役割があると感じた。
現在、国会では安保法制関連法案の議論がされている。
衆議院で可決され、議論の場は参議院に移ったが、
戦後70年もの間日本が積み上げてきた平和の礎を壊すようなことがあってはならない。
原爆資料館での見学時間は30分と短く残念だったが、たくさんの死体が火葬されている情景を見つめる、
死んだ幼子を背中に背負った小さな少年の写真が忘れられない。
戦争は絶対してはならない。戦争に向かう道を歩んではならない。
今の国の動向は、どうしてもそれに向かう気がしてならない。
反対の声をしっかりと上げ、民意を示していきたい。
また国会においても徹底した議論を行い、その危うさ、おかしさを如実に浮かび上がらせてほしい。
タイムリーなこの時期に長崎の地を訪れ、平和について改めて考える機会を頂けたことに感謝する。
一議員として、これからも地方議会の場において平和を希求していく。
以上
日時:7月29日(水)~31日(金)
研修地と内容:
29日 熊本市役所/地下水保全、涵養、汚染対策(熊本)
30日 水前寺成趣園、健軍水源地/遊水地、水源地の見学
城南物産館火の君マルシェ/指定管理の新規直売所
以上、熊本
長崎市役所/長崎さるく(国内初のまち歩きイベント)、空き家対策(長崎)
31日 原爆資料館、長崎さるく体験・原爆被災研修(長崎)
以上、長崎
上記研修の中から、特に印象に残った以下の2点を報告します。
1、熊本市役所、水前寺成趣園、健軍水源地
テーマ:地下水の保全・涵養・水質汚染対策、及び水源地の視察



●地下水の保全・涵養
人口50万以上の市では国内唯一、上水の水源が地下水を利用している熊本市。
阿蘇山系を背景にして日本一の水を保持している自負を行政の方々から感じた。
全て地下水を利用しているという点では、我が安曇野も同じだが、様々な先進的な取り組みをされている。
印象に残った取り組みとして、
・節水対策
キャンペーンにして商品を出すなど市民が楽しんで意欲を持って取り組める。
・涵養対策
市外地域だが阿蘇方面の町村に市が土地を借りて植林をする。
静岡地域で漁師が山の手入れをしたというニュースを聞いたことがあるが、
水を利用する下流の人々が上流の森づくりをするというのはなかなか簡単にはできないことだと思う。
熊本市が行政区を超えて取り組まれていることに驚いた。
・ビニールハウス補助金制度
ビニールハウスの雨水までも集めて地下浸透をさせる。
地下水を守るという意識が徹底されていると感じた。
安曇野市の場合、雨水利用のための施設設置の補助制度があるが、
各戸の経済的メリットからの利用であり、
地下水を保全するために節水するという意識はまだ薄いように思われる。
市民、行政が地下水の大切さ、かけがえのない財産であることの意識を熊本に学び、
安曇野市で展開していく必要がある。
尚、節水キャンペーンなどにより、上水道事業の収益は下がるが、
これは何が大切かという優先順位を明確にし、
下がった分については水道事業会計に一般財源を拠出すればよい。
●水質汚染対策
熊本も農業県であるため、肥料による亜硝酸窒素による水質汚染が顕著で、
その危機感からも地下水保全の意識が高まったのではないか。
安曇野市でも一部汚染されているところがあるが、基準値内ということで、まださほど問題になっていない。
しかし熊本の場合がそうであったように、一度基準を超えてしまうような汚染があると、
30年も取りくんでも基準値に戻らない状況がある。
このあたりでしっかりと慣行農業(施肥や農薬散布など)について見直す時である。
熊本県が施行した「熊本県地下水と土を育む農業推進条例」は
地下水と農業の関係がかけ離れたものではなく、一つであるという考えからできたものである。
今後農業・農政サイドがこの条例をどのように実質的に機能させていくか注目したい。
●まとめ
私は一般質問で、「安曇野の水環境を守ろう」と言うテーマを取り上げ、
安曇野の水を脅かすものとして、三郷小倉の廃棄物処理施設の排水処理の不備を訴えている。
これを単なる目前の施設の一地域の問題ということではなく、旧5町村に亘る安曇野市全体の問題、
さらに安曇野を愛してやまない国内外の人たちにも関係する問題、
また我々が受け継がれたように、我々もまた次世代に受け継いでいくべき不可変の資源・宝という観点から、
広い視野を持って、安曇野の水を安曇野内外の方たちと守っていきたい。
安曇野市でもこれまで以上に、地下水の質と量を注視監視し、今からできる対応を行政・議会で議論し、
市民にも地下水保全が市の最重要課題であることを訴えていかなければならない。
具体的には節水キャンペーンは安曇野市でも取り組んでみてはどうだろうか。
2、長崎市役所と長崎さるく
テーマ:長崎さるくの取組と平和研修



●長崎さるくと滞在型観光について
今でこそ街歩きは滞在型観光として位置付けられているが、
長崎さるくは日本で初めてのまち歩き博覧会として2006年にスタートした。
自分たちの暮らす地域の歴史や文化、生活そのものを学び体験させるツーリズムであるが、
観光都市長崎において、従来の基本となる観光資源にプラスされ、すっかり定着している。
安曇野市でも2013年に安曇野市観光振興ビジョンが策定され、
「安曇野暮らしツーリズム」というキーワードのもと、安曇野らしい観光を展開させていくためには、
市民の協力を得ながら、大切にしてきた自然や農村景観、歴史・文化、コミュニティを
来訪者に伝えていくことが必要だと考えた。
長崎市も安曇野市もベースとなる考えは共通しているが、
その実行においては長崎市が「長崎さるく」を通じて何歩も先をいく。
安曇野市においても、安曇野案内人倶楽部という民間グループがまち歩きのガイドを行っており、
新たなガイドを養成する講座を開くなど、著しい活動を展開し、
市の観光理念である安曇野暮らしツーリズムを体験する機会を提供できている。
しかし、安曇野市全体を通じては、この観光理念の認知度がまだまだ低く、
引き続き周知に努めなければならないと思う。
これからの観光は、その地域に暮らしている人々の喜びや幸福を、
旅行者もまたいかに感じられるか、その仕掛けづくりが肝要である。
アルプス国営公園からの働きかけによって今年度から始まった
農家民泊もそのような仕掛けの一つであると言える。
このように民間の方たちの暮らしや活動に市外の人たちも参加し、喜びを共有すれば、
単なる旅行者ではなく、安曇野のファン、安曇野を第2の故郷と感じ、
何度も足を運ぶような人たちが生まれてくるのだと思う。
この点については、自分も最も関心ある課題であるので、引き続き働きかけていきたい。
●平和研修について
最終日に長崎さるくの体験として、平和をテーマにガイドさんに案内してもらった。
被爆地である長崎には、市民の公共の福祉の充実だけでなく、
世界に対して平和や核兵器の廃絶を訴えるもう一つの重要な役割がある。
市長や議会の果たすべき役割があると感じた。
現在、国会では安保法制関連法案の議論がされている。
衆議院で可決され、議論の場は参議院に移ったが、
戦後70年もの間日本が積み上げてきた平和の礎を壊すようなことがあってはならない。
原爆資料館での見学時間は30分と短く残念だったが、たくさんの死体が火葬されている情景を見つめる、
死んだ幼子を背中に背負った小さな少年の写真が忘れられない。
戦争は絶対してはならない。戦争に向かう道を歩んではならない。
今の国の動向は、どうしてもそれに向かう気がしてならない。
反対の声をしっかりと上げ、民意を示していきたい。
また国会においても徹底した議論を行い、その危うさ、おかしさを如実に浮かび上がらせてほしい。
タイムリーなこの時期に長崎の地を訪れ、平和について改めて考える機会を頂けたことに感謝する。
一議員として、これからも地方議会の場において平和を希求していく。
以上
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