定例会での本格議論に入る前に、このことを書いておかなければなりません。
みなさん、近頃の信毎や市民タイムスなどの地元新聞で取り上げられている
安曇野市議会の会派の政務活動費問題についてご存知だったでしょうか?
これまた明るい話題ではないのですが、
しっかりと知ってもらいたい内容なので書きます。
政務活動費(せいむかつどうひ)とは、
地方議会の議員が政策調査研究等の活動のために支給される費用のことです。
昨年は兵庫県議会の号泣議員による使い方が取り上げられていました。
ちなみに安曇野市議の政務活動費は1人あたり月7500円、年間9万円です。
この政務活動費について、
安曇野市議会の会派(議員のグループ)の使い方に疑義がある、
として、市民の方から住民監査請求が出されていました。※住民監査請求(じゅうみんかんさせいきゅう)とは、
住民が自らの居住する地方公共団体の違法、
若しくは不当な財務会計上の行為があると認められる場合、
その地方公共団体の監査委員に対し監査を求め、
その行為に対し必要な措置を講ずべきことを請求することができる制度
監査請求の内容は、
昨年の2月に当時最大会派だった信政会と第2会派政和会の計10人の市議が行った
視察旅行に政務活動費を充てたのは不当だとするものでした。
監査委員の出した請求結果は、
この視察は1泊2日のパックツアーのうち、和歌山で行われた観光フォーラムに参加するなど、
全体の時間の28.3%は政務活動と認定するが、それ以外の71.7%分は観光的として、
使った政務活動費の71.7%分を返還するように求める、というものでした。
観光的とされたのは、大阪なんば花月での観劇や神戸港でのディナークルーズなど。
細かな経緯はもっとあるのですが、それは割愛します。
この監査請求を出したのは矢澤毅彦さん。
一昨年の安曇野市議選に20代の若さで立候補し、
たった5票差で惜しくも落選した方です。
彼は議員への公開質問状という形で議会に対して問題提起し、対応するように求めました。
さらに8月末に矢澤さんは報告勉強会をマスコミも呼んで開き、この問題を公に追及しました。
僕はそれを聴きに行きましたが、丹念に調べ上げ、根拠をもって、
そしてとても分かりやすく説明していました。
このように矢澤さんは幾度もこの問題を議会に対して投げかけたわけですが、
議会の対応は鈍く、真正面からこの問題を取り上げることはありませんでした。
また当事者である該当会派からも矢澤さんを始めとする市民に対して、
そして議会内でも説明はありませんでした。
そういった中で、矢澤さんは最後の手段として、
住民監査請求という権利を行使して、
監査委員という第三者機関にその追求を委ねたのです。
監査委員の監査結果の中で
「政務活動費は市議会議員の調査研究に資するために
必要な経費の一部に充てるために交付されるものであり、
その原資が市民からの税金であることはいうまでもない。
その主旨をよく理解しているはずの市議会議員の政務活動に関連して
今回住民監査請求が提起されたことは、監査委員として誠に遺憾に思うところである。」との厳しい記述があります。
「遺憾(いかん)」とは政治でよくつかわれる言葉ですが、残念であるという意味。
残念である、という意味だけではなんとなく弱く感じますが、
政治で使われる場合は、「これはかなりあきまへんで。」という意味を含みます。矢澤さんの主張は認められたわけです。
さてここからが本題。僕の言いたいこと。
今回の問題、議会の一員である僕としても忸怩(じくじ)たる思いがあります。
忸怩たる思い=すなわち、恥ずかしい思い。
それはこの会派の方たちの視察旅行の不適切さについてではありません。
一生懸命問題提起をしてくれている市民がいるにもかかわらず、
それを真正面から受け止め対応をしなかった議会に。
そしてそのための働きかけができなかった自分にです。結局議会には自浄能力が無く、
当事者である自分にもそのことを議会内で取り上げるだけの力が無く、
そのことを市民、第三者機関に委ねるしかなかったわけです。その意味では矢澤さんは最後まで信念をもってやり抜きました。
矢澤さんは自身のブログでこう言っています。
「今回の発端は公開質問状でした。
が、この件で名前が挙がっている方達には全回無視(無回答)されました。
(中略)そもそも、最初にちゃんと書いておけばこうはならなかったと思います。」
市民からの問題提起にきちんと向き合わなかった結果が、
住民監査請求ということにまでなったのだと思います。
議会の不誠実さにより、議会の信用の失墜を自ら招いたとも言えます。この間の新聞に載った該当議員のコメント、これもまた問題です。
「市民と我々の考え方にズレがあったのかもしれない。」
市民の考えとは、矢澤さんの今回の一連の行動の原点にあった
不適切な支出を許したくないという正義であり、
監査請求にあった「誠に遺憾である。」という多くの市民なら感じる思いです。
では、
それとズレている会派の方たちの考えとは一体どんなものなのでしょう?
ズレがあるなら、その考え方をしっかりと説明してもらいたいものです。
そもそも今回の監査結果をどのように受け止めているのでしょう?また今回の問題は、議員の一部グループである会派によることとは言え、
それは議会のことでもあります。
議会としても、今回の一連のこと、また監査結果をどのように受け止め、
議会として対応していくのか。
そのことに真剣に向き合い、議論をしなければなりません。
「市の不祥事が続いているけど、それを追及する議会側だってこのザマだ」これはある近しい方から言われた言葉です。
ある同僚議員が
「議会の権威や権能を守る」ということをよく言われるのですが、
それは声高く言ってもそうなるものではなく、
市民からの投げかけを真摯に誠実に受け止め、
自分たちの苦しい部分でもしっかりと向き合い、
改善していくことでしか信頼は得られず、その信頼があってこその権威だと思うのです。
今の安曇野市議会にはそれがありません。この監査結果を受けて、今、議会がどのような対応をするのか、
それを市民は注視しています。
監査請求の結果が出てから1週間が経過しましたが、
まだ議会ではこの件についての説明や対応が議論されていません。
あと数日待ってもそれが起こってこないようなら、
こちらから提起しようと思います。
当事者会派の議員たちを責めることをしたいのではありません。
もう一度本当に自分たちの襟を正し、議会を創っていこうと呼びかけたいです。
- 関連記事
-